2018年08月17日

オ-ルド或いはヴィンテ-ジなスト-ブのこと

異様に暑い夏もお盆を迎えた辺りから、陰りが見えてきて心にも少し余裕が出て来たように思います。今年も恒例のゲ-ム仲間とのキャンプをする季節がやってきました。休みにはキャンプ道具のメンテナンスを続けているこの頃です。キャンプと言ってもバ-ベキュ-だとか焼き肉だのスノッブなものは御免被りたい私はもともと美食家でもなく食い道楽でもありません。暮れていく空を眺めながらフライパンを振ったり、ダッチオ-ブンでロ-ストビ-フを作ってみたりする時間を愛する方です。勿論どこぞに美味しいラ-メン屋があるとか、ボリュ-ム満点の洋食屋などと耳寄り情報を聞けば胸躍る気持ちにはなりますがしかし、どちらかと言えば死なないために飯を食う、というのが普段の私。仕事の日常では美味しさより食費を優先するサラリ-マンです。それでいてアウトドアそれもキャンプ場なぞに行くと気分も高揚してそれなりの食事を作る程度の嗜みはもっております。でも根っこは料理より実は” 火遊び " が好きなんです。だから火にまつわるキャンプ道具、分けてもクッカ-、コンロ、バ-ナ-、スト-ブ系やランタンなぞはメンテナンスも含めて私の大好物です。この手のものはいつに於いても私の物欲をくすぐりますが、あれば便利、と求めたところで結局手元に残っているのは何故かどれもこれも、手の掛かるものばかり。これからご紹介するもの達はそれぞれ、折々の思い出が詰まった味わいのあるもの達ですが、今でもサバイバルゲ-ムに連れて行くものもあったりしていて思い出と共にあるばかりでなく、メンテナンスを含めて今も思い出を共に紡ぐもの達でもあります。


Coleman PEAK1 Model 576


PEAK 1  Model 576  Coleman CANADA   1976年製 当時のファンネルや燃料ボトルもまだまだ現役


1976年と言や、受験勉強しなきゃと思えば思うほど頁をめくってしまった横溝正史の推理小説を思い出します。謎解きと言うより耽美でおどろおどろしい筋運びが麻薬的でした。その代表作「犬神家の一族」が映画化された年。湖面から突き出た足のポスタ-が其処此処に貼られていたのも懐かしい。アカデミ-賞を獲った「ロッキ-」やデ・ニ-ロの「タクシ-ドライバ-」、” 666 ” が大流行した「オ-メン」が作られたのもこの年。直上の写真に写っている PEAK 1 の製造年月の刻印がまさにこの年。コ-ルマンは今もガソリンスト-ブの代名詞と言って良いほどですが、当時から既に軽くて強大な火力が売りで山をやっている連中からは絶大な支持を得始めていました。支持を得始めたというのは当時、山やる連中のスト-ブというのは基本がアルコ-ルかケロシンを使うのがまだまだメインで、守旧派というのはいつの世も手強かったんですよね。しかし、プレヒ-トなしで着火し、その上トロ火まで出来るという当時としては画期的な機能を持ったガソリンスト-ブで私にとっては、欠点など何処にもないと思えるほどでした。尤もザック中のボトルからガソリンが漏れて背中の皮が爛れた事件がありましたっけ。おっと閑話休題。実はこいつが私の手元に来たのは翌年1977年。ダッカで日航機をハイジャックした日本赤軍の要求を政府が飲んだ「超法規的措置」、クンタ・キンテで有名になったアレックス・ヘイリ-の「ルーツ」が日本で放映され誰も彼もが家系図に興味をもち、エルビス・プレスリ-が死に、キャンディ-ズが武道館で普通の女の子に戻っちゃった、何ともめまぐるしく落ち着かない、それでいてどれもが軽薄で世の中は何処へ行って自分もどこに向かうのか、と全く定められない混沌としていた年でありました。
 この後、PEAK 1 は鼎宜しく安定性を増すためにボディに折りたたみ式の足を備えた400シリ-ズに変遷していきます。でも、私はこのグリ-ンボディのModel 576 こそPEAK 1 だと今でも思っています。それほどエポックメイキングで全能なスト-ブでありました。




Coleman G.I Pocket Stove MODEL No.538-700


Coleman G.I Pocket Stove MODEL No.538-700  1979年頃


こいつは原型がM-1950 G.I STOVE です。映画「ジャ-ヘッド」でG.I スト-ブを使ってソ-セ-ジを焼いている内にスト-ブの火がテントに燃え移って大騒ぎになるシ-ンがありましたが、形状がよく似ていたのでもしや?湾岸戦争当時もまだ使われていたんでしょうかね?軍用はアルミケ-スに入っていましたが、私のこれは民生用なのでケ-スが樹脂製です。このケ-スの形状については解説書や先人の記事を読んでも誰も触れていませんが、よく見るとストラップを利用して山装備に括り付けられるようにとベルト幅の溝が切ってあります。発売された当時は大ブ-ムだったバックパッカ-が世界中を闊歩していた時代ですからこの様な形にされたんだろうと思います。気楽な学生時代の私もご多分に漏れず、典型的なフレ-ムザックを背負ってあちこちを旅したものです。大町から糸魚川まで踏破した折、姫川ダムの放流サイレンが聞こえず、危うく濁流に呑み込まれそうになった間抜けな珍道中を繰り広げたときには、コイツが傍らにいました。他のタイプとは違いポンプ部分とチェックバルブが一体になった独特の構造をしているお陰でメンテナンスは非常に楽です。慣れないと着火した途端に轟音と共に火柱が上がるじゃじゃ馬。火力調整なんて忘れて産まれてきた、と言ったそんな無骨さが魅力のスト-ブ。


Coleman 530 G.I STOVE


Coleman No.530 A47  1947年製 原型は軍用G.I スト-ブ


ヴィンテ-ジものと言われてはいるものの結構出回っていて、そういう点ではちょっと " らしく " ないんですが、原型は軍用 M-1941 G.I STOVE 。1QUART(クォ-ト/0.946L) の牛乳缶に入る大きさがウリで戦中、米兵の食事や暖をとるための信頼度抜群のガソリンスト-ブでした。その民生用が530で日本ではクロ-ムメッキされているタンク部分を磨き上げて神棚に飾っておくようなマニアが多く、とても過保護な扱いをされているアイテムではあります。ま、僕も磨いては悦にいる部類ですけどね(^^; 殆どの条件下で着火するガソリンを用いるところがいかにもミリタリ-なテイストがプンプンしますが前述のG.I STOVE 同様風にはめっぽう弱い設計で見かけ倒しです。しかし殆ど火力調整なんぞ出来ず " 点いているか消えているか " の二者択一みたいなところは軍用の外連味のなさです。燃料を気化させるためにプレヒ-トが必要だったり燃焼音が大きいところなど今のキャンプ道具と比べると不便この上ないところが満載なんですが、オ-ルシルバ-の貴婦人然とした風情と不自由を楽しむおもしろさがこのスト-ブにはあります。

  続きを読む