2014年02月01日

英軍のBéret (今どきのベレーを考える 1)

Royal Air Force Police
Royal Air Force Police




ミリタリベレーの被り方として、様々な紹介記事をネット上でも見ますが違う色のベレーに徽章を付け肩にはこれまた違う聯隊の TRF を付けた写真を平気で載せたりするものがあって、もう少し拘ってやって貰いたいなぁと思う訳です。ネットショップ記事になるともっと酷くてミリタリーを謳いながら、ベレーの紐を出したままの写真をぞろり載せる暴挙。紐を出すのは各国軍隊の中でスペインの他わずかであって、基本的には紐通し(バインディング)の中に入れ込み、紐を出すことをしません。スペイン軍に限って申せば外に出す紐の長さも通常以上で「ベレーの飾り」という位置づけです。さてその記事では嵩に着て紐でサイズ変更できます・・・・! ! まるで One Size Fits All ? そんな馬鹿な!サイズもきちんと刻んで存在しています。売らんかなが丸出しですね。またどの記事も、「世界の多くの軍隊は徽章を左、垂れを右、フランスは反対。ロシアは徽章を正面(イスラエル軍も近い!?)、垂れは右。一般的に徽章は目の上に持ってくる」と通り一遍な説明がなされていますが、基本を知るなら幾度も申すように本邦初のベレーのかぶり方を是非お読みいただきたいです。ここで内容は割愛させていただきますが、文字通りベレーのバイブルだと言えます。基本が出来てこそ現在のベレーのアレンジに活かせるというものです。

米軍では煩雑さを嫌ってパトロールキャップにすげ替えたようですが伝統的にベレーを被る軍を持つ国の人達は、本職は勿論のこと一般市民たちにとっても、ベレーへの思い入れやその意味合いは我々が思う以上の重みがあると言えます。オペラ蝶々夫人の衣装や外国の映画で日本の文化を歪めて視覚化されたりすると失笑したりムッとするのと同様、軍用ベレーの被り方はれっきとしたものですから、彼らから嘲られるような着用は恥ずかしいと思わねばならないでしょう。少なくともBDU や プレートキャリアに血道を上げて本物はあ~だこ~だとか言うのならベレーの被り方にも拘って貰いたいと思います。


The Royal Anglian Regiment
The Royal Anglian Regiment 「波打ち」が良くわかります


ベレーは形付けから始めます。最近は若い将兵を中心に形付けにスチームを使い垂れの縁をはっきりとさせる手法が多く採られているように思いますが何れにせよ手に入れていきなり意に沿うようには出来ていません。1~2枚目に掲げた写真ですが多くの兵士の左側頭部から頭頂部にかけてベレーが波打っているのがお分かりだと思います。この「波打ち」は頭頂部から右側頭部ににかけて手のひらで押さえたまま引き下ろす繰り返し動作から生み出されます。この様にして自分の頭にフィットさせるべく手間暇を掛けてベレーに形を付けていくのです。




ベレーのサイズ

私の頭周は57cm ですが、深く被るベースボールキャップ等は59cmです。然しベレーの場合、サイズは57~58cmを選びます。ズボっと被ってサイズ選びをしていませんか?被る、ではなく少し深めに載せる、をイメージしてください。GUNMO 氏は嵌めると表現されていますがまさに言い得て妙です。全体、後頭部が張り出す欧米人と比べて日本人は「絶壁」が多い上に鉢が横に広いので絶対サイズは大きめにはなりますが普段被っているサイズより少し小さめを求めるのがコツです。同じアジア人系ではRGRが良い手本でしょう。欧米人に生まれ変わることも頭蓋骨の形を変えることもできませんが、工夫次第でベレーをスマートに被ることは可能です。


hikaku

日本人、アジア人系                                     欧米人系



Gurkhas
Royal Gurkha Rifles 左端は16AAB に所属しているのでマルーン



英軍のBéret (今どきのベレーを考える 1)
この被り方が出来ればOK!



横から見たベレーの被り位置
英軍のBéret (今どきのベレーを考える 1)
やや目深に後ろ上がり気味に被ります 間違ってもあみだに被らない!

前は眉の上からやや目深にし、後ろはつむじより少し下辺りにバインディングが来る後ろ上がりのイメージです。あみだに被ると大戦中のイメージになりますよ!サイズは大きくなればなるほど、頭も大きく見えます。後述しますが近年のミリタリーベレーは小さめが主流になりつつありますから今風を目指すならワンサイズぐらいは小さめをお奨めします。ベレーに関しては大は小を兼ねません。




ベレーのカラー

英軍のBéret (今どきのベレーを考える 1)


欧米人に知己の多い友人は某国のある色の実物ベレーを持っていますが、軍エリート部隊でもないお前にかぶる資格はない、とスゴまれたとか。我々はお遊びなんだから、んなこたぁ大きなお世話だわ、と笑い飛ばす訳ですがベレーの色への拘りは相当なものです。さて英軍だけでもベレーの色は一体何色あるのか俄には判らぬ位です。たとえば一口にグリーンだとかマルーンだとか表現されますが英軍だけでもRoyal Marines のグリーンは翠と表現したら良いコマンドグリーン、Royal Gurkha Rifles や The Rifles はライフルグリーンと呼ばれ深緑です。知ってしまうと一絡げにグリーンベレーなんて言下に言い放つことが出来なくなります。空挺のマルーンもイギリスとフランス、二国を例にとっても微妙に違います。筆を進めればダークブルー、ネイビーブルー、カーキ、ブラウン、ブラック、RAF ブルーグレイ、ライトグレイ、ダークグレイ、スカーレットetc.因みにRSDG のライトグレイは聯隊が乗馬していた騎馬の毛色から来ています。略帽という位置づけですがベレーは色を見るだけで歩兵なのか工兵なのか、そして徽章のあしらいで何処の聯隊なのか、一般兵なのか士官なのかまである程度判るのです。余談ですがベージュカラーで有名なSAS は一目でそれと判るため、SAS ベレーを被った写真が出回るのは殆どが OB や物故者というほどです。被るベレーの色によっては命を狙われる、行動に支障が出るという訳です。ベレーにはそれぞれに由緒由来があります。冒頭に申したように色と徽章を間違えるようなおバカなベレーを被るのは止めましょう。ミリタリーベレーの文化がほとんど無い我々でもその色や徽章にも目を向けて行くと自ずと知識や常識が身につくというものです。

本当に書きたいことはこれからなんですが、説明が下手くそで意外と紙面を使ってしまうので次回に持ち越しです。


英軍のBéret (今どきのベレーを考える 1)
最近増えてきました、徽章を左側頭部に寄せた被り方



<続く>






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この記事へのコメント
お疲れ様です!

目が疲れました…。

ベレー帽と共に伝統は受け継がれているのでしょうね。

この後に、参考までに THE BRITISH ARMY GUIDE 2012-2013 のベレー帽に関しての一節を抜粋して書き込んだのですが、またまた入力禁止の単語が含まれてるとかでコメントアップできませんでした。

メールで送っときま~す!^O^/

そう言えば、何年か前に、アメリカ陸軍では一般兵士のブラックベレー帽の着用を「オプション扱い」に変更したとか…。作業用ベースボールキャップとベレー帽の2つをいっしょに持ち歩くのが面倒だからって…アメリカらしい…。(苦笑)
Posted by IXABA at 2014年02月03日 15:59
店主殿:メール有り難う御座います!内容もよく分かりました。英軍のベレーの歴史は凡そ100年ありますから変遷を追うのも楽しいです。

米軍のベレーは誰がみても米軍としか映らない被り方で、ある意味特徴的でしたが、オプション扱いに!ランボーに出てくるトラウトマン大佐は矢っ張りベレーじゃないとね~。
Posted by Kafu'Kafu' at 2014年02月03日 16:49
いつも楽しく拝読しております。
先日、イギリス軍の代用として実物中古ということで購入した米軍のマルーンのベレーの縁は布製(ナイロン)でした。
店の方の説明では、下士官以下は布製?とのことでしたが・・・。
イギリス軍のベレーの縁の布製は有るのでしょうか?教えてください。
Posted by b-swan at 2014年07月11日 10:12
b-swan さま:こんばんは~。バインディングに布!製があるというのは見たことはありませんが、多数の実物の輸入をしている友人の言では存在しています。

しかし下士官以下が布とすれば、士官クラスばかりがネットに放出しているんでしょうか?あり得ないですね。

ランクがあるのは徽章です。徽章は士官クラスになると金属から布製や錦糸というか友人の表現を借りれば金属モールの刺繍みたいになります。ですから逆に布製は士官以上になります。
Posted by Kafu'Kafu' at 2014年07月11日 22:22
さっそくのご教授ありがとうございます!
なるほど。おっしゃる通りですね!革製バンディング(名称を知りませんでした)を探します。
購入した米軍のベレーは、裏地が剥がされ、徽章用の型紙が小さく加工され、生地もカミソリか何かで薄く加工されてからフラッシュっを縫い付け部隊クレスト(士官は階級章)が付けられており、使い込んだ感じが気に入っていたので、イギリス軍に流用できず残念です。
ベレーはイギリス軍が最高です!カッコよくて見ているだけでワクワクします。

1.ベレーのかぶり方を教えてください。
SASが、トップ部分をベレー徽章の後ろ(額部分)にギュウギュウにたくし込んで、先端を額の前に垂らすかぶり方をしている写真を観ましたが、空挺とも海兵とも違うようです。SASだけなのでしょうか?
このかぶり方が気に入っているのですが、空挺や海兵装備でこのかぶり方をしたらおかしいでしょうか?

2.スモックのことを教えてください。
最近、ショップでボタンが出ていて、両袖にベルクロが付いているMTP迷彩のスモックを見かけます。新品で1万以下と安価なため、英軍入門者には魅力です。
実物との説明がありますが、筆者の着られいるのは隠しボタンタイプですね。
MTP迷彩のボタン出しタイプは存在するのでしょうか?
教えてください。
Posted by b-swan at 2014年07月12日 11:06
b-swan:こんばんは。バインディングは友人曰く布製(リボン生地様)もあるということですよ~。ただ米軍ベレーは英軍の被り方と些か被り方に違いがあって、それように形が付けられていたら少し厄介かも、ですね。

1,の" 額の前から垂らす被り方 " とはトムスタイルかな?私の駄文「今どきのベレーを考える2」をご覧になって下さい。

2.MTP Wind proof smock は初期型と隠しボタンタイプの現在のPCSタイプがありますので、NSNタグが付いているようなら初期型だと思います。

大きな違いはさほど無く、PCSタイプはボタンが露出していない他は脇に熱気抜きのファスナーが付加、ハンドウォーマー(下側の両サイドポケット)部にフリース生地が使われている程度です。初期型も出たての頃は国内で3万円近くしていましたから、お買い得ではないでしょうか?

以上お役に立てれば幸いです。
Posted by Kafu'Kafu' at 2014年07月13日 01:49
ご丁寧な回答ありがとうございます!感謝!感激です!
すみません。トムスタイルではないのです。文章で表現するって難しいですが・・・。
本ページの「Royal Air Force Police」の写真の右の茶の髪の女性兵士や左のメガネの男性兵士に近いですが、頭頂部にはまったくシワが無くお椀のように頭にフィットさせ、余った布部分をクレストの後ろに押し込んでいました。
蛇足ですが、映画ワイルドギースのトッシュ・ドナルドソン(イアン・ユール)<FALショートを持つ口髭の兵士役>のSASクレストのベレーが、独特で英軍ベレーが大好きになりました。

ボタン出しスモックはMTPの初期型だったんですね。モヤモヤが解消されました!
ヒューストンから同じ初期型タイプのACU迷彩とか痛いレプリカが出ているので、ちょっと疑っていました。
ショップはWIPでタグも本物らしい(自分は真贋は判定不明)ので、購入しようと思います。
Posted by b-swan at 2014年07月13日 10:43
私の好きなSASの写真を探したところ、イギリス軍ではなく、オーストラリア軍SASのようです。
http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=SAS%E3%83%99%E3%83%AC%E3%83%BC#mode%3Ddetail%26index%3D7%26st%3D102
Posted by b-swan at 2014年07月13日 16:37
b-swan さん:読解力が無くて申し訳ないです。概ねどんな形か判りました。

どちらかというとオーソドックスな部類に入ると思いますよ。強いていうならチョイと昔の海兵っぽいですかね?基本をベースにアレンジを加えることは大いに結構なのではないでしょうか?

これからのベレーライフをどんどん楽しんでいってください。
Posted by Kafu'Kafu' at 2014年07月13日 18:09
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